全滅

我が家は全滅することがある。
たとえばノロウイルス。1ヶ月ほど前もそうだったが、ある日の夜、夜中に強太郎が吐いた。突然の出来事に、一瞬我が家はパニック。
お腹が痛いと苦しむ息子。特に男の子は病気に弱い傾向がある。
6年生とはいえ、まだまだ子供。「おかあさん〜痛いよお〜」と、泣きながら訴える。散々父親に厳しくされた私は、「男なんだから少しくらい我慢しろ!」と、言いたいところだが言えない。つらさがわかるだけに、妻に一言。「お腹さすってやれよ〜」。
それから家中をアルコール消毒する。ドアノブ、トイレ、洗面、ソファー、テーブル、椅子・・・・・。
ビクともしないのがノロ。次の日も苦しむ強太郎君。食べられないけどお腹が空くのがノロ
朝、妻が病院へ連れて行くのだが、痛がる息子を抱えるのは至難の業。
そんな時の母は強し。動けないと、ひょいと息子を抱える。
細い体とはいえ6年生の男の子を抱っこする妻に、妙に興奮。
「いいなあ〜たまんねえな〜おまえ〜」と言うと、「馬鹿じゃないの?」と一喝。儀式のように一度叱られたあと、苦しむ子供を見ながら、後ろ髪を引かれる思いで出勤。
仕事を終え夜帰ると、次女が感染。二人の患者を抱えた夫婦は、あたふた、オロオロ、バタバタ・・・。トイレで吐かせて、ボールを抱えさせて、やっと寝かせた夜中、末っ子がいきなり布団に吐く。これで3人目だ。順調に拡大感染が始まった。
飛び起きて後始末する妻。抱きかかえる私。お腹をさすったり、髪の毛をなでたりしながら、必死で落ち着かせる。
と、強太郎が起きてくる。「おかあさ〜ん、お腹痛い〜」。
患者が3人となると、上から順番に冷たくなる妻。「自分でトイレ行って、便器抱えてなさい!!」。よくしたもので、長男も妻の言動で何かを察知する。何も言わず、黙って布団へ。
深夜2時に、1時間くらいのドタバタ騒動。やっと寝かしつけて朝4時。また突然妻が飛び起きる。
三女が吐いた。どんどん肝が据わってくる夫婦。「要は寝るなって事ね」と、笑う妻。私も「もうこれは受け入れるしかないな」と笑う。
2日間の間に4人が感染する。翌朝、ほとんど寝付けないままの妻が、順番に抱えて子供を車に乗せる。最初の感染者である長男に、「自分でちゃんとしてね」と言い残し、病院へ。私は再び、後ろ髪引かれながらもサラリーマン出勤。会社の朝礼で、「カクカクじかじかの為、何かあった場合、早退するかもしれませんので・・・」と説明。責任者であるから自由にできるというわけじゃない。かえって申し訳ない気持ちになるし、立場も悪い。
妻からは緊急連絡もなく、無事に仕事を終えて家に帰ると、長女がお腹が痛くて塾を休んでいると聞いた。
見事に5人ヒットした。いつもと違い、ひっそりとする我が家。まとわりつく子供のいない、静かな夕食。いいんだか、悪いんだか。
深夜、ふと夜中に目が覚めた。
何かがおかしい。ひどく寒い。腹が痛い。激痛だ。腹が痛いことに気づいたあたりから、激しい吐き気が。トイレに行こうとして立ち上がった瞬間、目の前が真っ暗に。膝を突く90キロ。ドンという音で、目が覚める妻。
「え?何?もしかして??」
そう。私の番だ。しかも、桁違いに重い症状となって表れた。40度の熱と激しい悪寒。お腹の激痛と頭痛とで、ほとんど泣いている状態。
「腹さすってぇ〜」「足さすってぇ〜」「痛てぇよお〜」
と、結局一番手間のかかる大男。7人家族で6人感染。一人だけ感染する暇もない妻。病は気から?俺の気力が弱いのか、妻の気力が流石なのか?
最後まで感染しないで、6人全員を完治させる妻。考えてみると、凄いなあと、改めて思うなあ。

一人当たりの病院費用はいくばくか。
たまたま昨日、医療費の案内が来た。去年1年間に使った医療費、全体で45万円。国の負担、35万円。我が家の負担、10万円。
国民の皆様、税金コストのかかる我が家、大変申し訳ございません。

税金までつかっとるやないか!  経費かかるなあ〜