部下の転勤

社命で部下が転勤する。
サラリーマンには逃れなれない現実。
思えば私も1年半前に大阪に転勤してきた。半年間の単身生活は、まったく味気ないもので、それまで5人の猛獣と、献身的なやさしい妻と暮らしてきた私は、一人住まいの生活にのびのびするどころか、一人がこれほどつまらないものかと、改めて家族の存在に感謝することになった。
一人の1LDK。
洗濯や掃除は、アマチュアスポーツ時代の合宿所や寮生活生活で慣れたものだが、食事だけはなんとも味気ない。
ローソン弁当、スーパーのお惣菜、大阪王将、時々部下たちと居酒屋。
濃い味と同じパターンに、ものの1ヶ月で悶絶状態になった。
しかし一方で妻は、毎週週末には必ず私のマンションに来てくれた。
車で4時間半。金曜日の夜中に出て、12時過ぎてからインターを降りる。
高速代を1,000円に。ガソリンは毎回5,000円以上だったろう。
子供たち全員連れて来る事もあれば、下の二人だけのことも。
私の母に子供たちを見てもらい、一人で来る事も頻繁にあった。
土曜と日曜の14時頃までの1日半の二人きりの時間。
逆にこれがいい。1週間の仕事のストレスは、この週末の為にある。
土曜の夜に二人で出かける、様々な大阪の街で、安くておいしい料理を食べながら、ビールと芋焼酎で舌鼓を打つ。
幸せな時間だ。
しかしそれでも妻が子供たちのもとへ帰るときは、さびしさで胸が詰まる。
二人とも口には出さないが、サラリーマンの現実に憤りを感じていた。
10年以上住んだ町から、知らない土地へ行く事を、泣きながら嫌がった子供たちは、それでも家族が離れ離れでいることより、新たな土地での生活にチャレンジする選択をしてくれた。
3月の年度末に家族で大移動。7人で奈良県に住まいを見つけ、はや1年が経とうとしている。

部下の転勤に、私が一番気を使うのは、家族の存在だ。
単身赴任になるならば、何とか阻止したいものだが、有能であればこそ、また、転勤の打診も多い。
悩みに悩んで決心した大切な私の部下の転勤申請を昨日済ませ、あとは経営層の承認を残すのみとなった。
部下に、今回の転勤の主旨や、営業戦略的な背景を説明し、仕事での今後の展開と期待を伝えた。
部下は燃えてくれたものの、気になったのは奥さんの存在だった。
奥さんは、母親が一人きりで生活しているのが心配だという事だった。
部下が単身で行けば、奥さんは母親の近くでいられるだろう。
まだ子供が夫婦。結婚して1年程度でしかないのに、離れ離れで暮らすなんて、私には賛成できない。
ぜひ、夫婦一緒に行ってくれと、余計な事かもしれないがと、
思いを伝えた。

奥さんのお母様は、きっとさびしいだろう。
しかし、これから家族を作る若い夫婦は、一緒にいるべきだ。
お母様もわかってくれる。奥さんも身を引き裂かれえる思いだろうが、
ここで思い切って亭主を支える道を選んでほしい。

部下を持つということ。仕事の指示や管理だけではなく、部下の生活の背景もまた、気にかけてあげなければならない。
給料や賞与のこともそうだ。査定をする時に、たった10,000円、5,000円を、誰につけるか・・・・・、真剣に悩む。
部下たちの後ろには、家族がいるのだ。

実力主義能力主義で査定する事も大切だが、年功序列的な日本独自の文化も私は大切だと思っている。
この20年近くの間、日本はアメリカ文化の真似ばかりしてきてはいないだろうか。歴史が違うのだ。狩猟民族とは違う。

転勤する部下。今朝、私に「夫婦で行きます」と話に来た。
「そうか・・・、よかったじゃないか」と私。
会話以外に抱えた事情や思いがそれぞれの心の中で交錯する。
しかし、あえてそれ以上は話さなかった。胸が詰まった。

会社の借上げ社宅制度があるおかげで、家賃は助かるだろう。

しかし、私は家族が多すぎて、社宅規定の範囲を超えてるんだよな〜。
それでも夫婦一緒、家族一緒が一番!!

ティファニーのPTが光る、夫婦の証。

規定を越えた社宅、1年前より負担が3倍以上に。

経費かかるなあ〜