バレンタイン 

今朝会社の部下の女性社員から、義理チョコをもらった。

一時より数は減ったが(笑)、それでも私に直接、はにかんだ笑顔で持ってきてくれた女性社員の義理チョコに、感謝でいっぱいだ。
上司として、許される配慮を精一杯してあげたくなる。そして、給料の少ない女性社員をいかに守っていかなかればならないかと、同時に身の引き締まる思いがした。

思えば私の小学校時代には、バレンタインにチョコレートをもらうことなど、もっとも珍しいことだった。
ひとつ50円のハートのチョコ。それが最初にもらったチョコだった。
学校ではまだ、学校に持ってきてはいけないルールすら決められていないほど、チョコの習慣など定着していなかった。
学校で帰りに、ある女の子からもじもじしながら頂いたのだが、自慢げに家に持って帰り、おふくろに見せた。
意外な事におふくろは喜んでくれた。大事に冷蔵庫へしまう。水泳の練習から帰ってきたら、夜食べようと決めていた。
スイミングでは案の定、ひとつももらえなかったが、その日は家に帰ればバレンタインのハートチョコレートがあることに、ウキウキしていた。

いつも家に帰るとおそい夕食だ。夕食をすませ、冷蔵庫を開ける。

ない。

なくなっている。

お袋に聞く。食べちゃったけど?という返事。

ひなる俺。

なんで〜?なんで食べるわけ〜?信じらんねえ〜!!と、身をよじらせ、地団駄を踏み鳴らし怒る俺。

「うるさい!」とオヤジにどじかられ、悔し涙を流す。

そこでおふくろが言った。「でもね、けんちゃん、今日はおいしいデザートを、お母さんが作ってあげたから!」

意味のわからないフォローだが、何か食わなきゃ気がすまなかったのか、私は黙ってそれを頂く事に。

「今日はすごいだで〜!手作りのババロアだでえ〜」と静岡弁丸出しのお袋が自慢する。

まったく気がすまない自分の怒りのやり場をババロアへ向けようと幼い心を素直な心に修正し、ボールにドテッと入った「手作りのババロア」を口に運ぶ。
ものすごいまずい。
牛乳の塊のような物体に、普通のみかんが、皮をむきたてで、白い内皮を付けたまま入っている。せめてみかんの缶詰にしてくれればいいのに。
まったく甘さはない。砂糖を入れ忘れたらしい。
ゲロッっぽい味がする。
すぐに「うえェ〜っ」と吐き出した。
キレるお袋。
自分で皿に分けずに、ボールに直接スプーンを入れて食べ始めた俺に、最後まで自分でちゃんと食べなさいと逆ギレされ、結局泣きながら、嫌々食べる。

結果、吐いた。

全部。

その晩、高熱を出した。40度近い発熱で、そのままおたふく風邪になった。

おたふく風邪が先だったのか、お袋のマズすぎるババロアもどきのせいでおたふく風邪に発展したのか。

私はいまでもババロアのせいでおたふく風邪になったのだと信じている。そして、初めてもらった、たった一つのハートチョコはおふくろに食われた。

最初のバレンタインデーは最悪の思い出だ。

昨日はパティシエを目指している小学校4年生の次女が、チョコの塊を湯煎して溶かし、飾りをつけて、自分なりのチョコを作っていた。

4人の女の子。それぞれにあげる友達も多い。近頃は子供の中でも義理チョコ文化があるらしい。

様々なチョコの作成グッズと色んな種類のチョコを買い込んできた。

いくらかかったの??と妻に聞くと、10,000円だって。(爆)

経費かかりすぎやろ〜