妻のおでかけ

昨日、妻が初めて近所のお母さん連中と飲みに出かけた。
結婚して15年で初めてのことだ。
15年間一度もなかったからといって、別に私が出るのを許さないとかそういうことではない。
妻自体、夫と子供を家に残して出かけるという気にならなかったのだ。
しかし、奈良に来てから、近所の大阪出身の肝っ玉かあちゃんのような主婦と仲良くなり、社交辞令ではない誘われ方をしたのようだ。

「なあ、今度、ほんま飲みいかへん?」と主婦。
「ねえ。いいですね、いきたいですね」と妻。
「ほな、いつにする?」と主婦。
「あ、え?は、はい・・・、じゃあ主人とそうだんして・・・(こまったなあ)」と妻。
「ええやん、日にちと場所だけきめよや」と主婦。
畳み掛ける肝っ玉主婦に、妻はタジタジ。

しかしある夜、遅い夕食をいただいていると、妻が、何か言いにくそうにしている雰囲気を察知。

「何?どうした?なんかある?」と聞くと、
「うん、こずえ(3女)の友達のお母さんから飲みに行こうって誘われてさあ〜、なんかどんどんいつ行くって言うからさあ、どうしようかと思って・・・」と妻。

明らかに私に気兼ねしているのだ。妻の妻としての倫理観は、夫や子供を残して、夜に自分が出かけるなどと言う事は、許されないというものなのだ。

昔とは時代も違う。働く主婦、共働きも増え、女性であってもそのような機会は多い。
しかし、妻は専業主婦である。自分の中で悪い事をするような潜在意識があるのだろう。

私は喜んでいつでも行くように言った。引っ越して1年。まだ友人と呼べる人もいない。妻にだって時にはゆっくりさせてあげたいし、楽しんで欲しい。

私達夫婦のストレス発散方法は、2人で飲みに出かけたり、2人で買い物に行くことだった。あわただしい日には、ささいな夕食の買い物だけでもいい。時々長女、長男、次女に下の2人の面倒を頼み、出かけるのだ。
しかし私の場合は、会社の部下と、会社帰りに飲みに行く事もある。立ち飲み屋、居酒屋、スナックなど、カラオケで発散する事もあった。そして、その度よく最終電車に遅れ、店まで迎えに来てもらうことも頻繁にあった。夜中であってもだ。
また、部下と飲む席に妻が同席する事もよくある。
だからうちの会社の部下は、みんな妻を知っているというわけだ。
しかし、妻が妻の都合で、妻の友人などと出かけると言う事が、過去にまったくなかったのだ。
家族ぐるみの付き合いは沢山あったのだが。

いつも夜中まで飲んでる私を迎えに来てくれる妻。
せめて今回は私が迎えに行く番だ。
仕事を終えて家に帰り、妻が用意してくれてあった夕食をとると、子供達の食べた食器を洗い、妻のいない居間で子供達とテレビを見て過ごし、10時頃子供を寝かせた。
勉強する長女に、そろそろお母さんが帰る頃だと思うから、近くまで車で迎えに行っておくよと話し、主婦ら3人のいる居酒屋に向かった。
なかなか出てこない主婦達。1時間ほど待つことになったが、思えばこのように妻を待たせてしまった事もあったのだと、改めて反省。イライラする権利はないのだと自分にいい聞かす。
結婚して15年。一度も単独で出かけたことのなかった妻。
改めて感謝する気持ちになった。
まるで妻をストーカーするようで微妙な心境だったが、居酒屋の窓際に、妻の後姿が見える。時々見える横顔。バカな亭主と思われるかもしれないが、昨今、これほど美しい主婦を私は見たことがない。
少しの間、母として、妻としての彼女とは違う、一人の女性としての彼女。
私はその後姿を眺めながら車で待った。

1時間後、ようやく店から出てきた3人の主婦。妻に全員、家まで送るよと言い、送迎した。一緒だった奥様たちから、仲のいい夫婦ですね!と言われた。
程よく酔っている妻。
43歳には見えない美しい女性だ。
結婚して初めての単独外出。「楽しかった?」と聞くと、3時間、じゃべりっぱなしだったらしい。
「よかったね」と私。「ありがとうね〜!」と妻。
妻があなた、少し飲んでいく?とお誘いが。
一度家に帰り、車を置き、近くの行きつけに向かう。
結局2人きりの時間を作ってくれた。どこまでもやさしい妻だ。
私はしあわせだな〜。

思えば出会ったのは高校時代。同じクラスの隣の席で、2年間過ごした。思い出は数え切れないほどあるが、今回は割愛する。

20年まえの私達だ。高校卒業後、長い間分かり合える少ない女性の友人として10年以上経った後、振り返ったら妻がいた。
高校の時からずっと好きだった。

行きつけの店、芋焼酎のキープボトル(一升瓶)「富の宝山」8000円がカラだったんだよなあ〜。
ボトルを入れて、ちょっとツマミを頼んで、結局1万円。
主婦同士のワリカンは一人当たり3500円だったって言うのに、なんでこうなるの?? 
確かに私のせいか・・・・。

経費かかるなあ〜