勇者

福島第一原発には、今この時も、東京電力の社員や協力会社、自衛隊の隊員が、必死に海水の注入作業などを行っている。3号機の水素爆発の際には、11人の社員や協力会社社員、自衛隊隊員が負傷している。自衛隊隊員は、コンクリート破片で脚に負傷し、傷口から被曝した事が報じられた。

まさに命を懸けている。あそこで放射線飛散爆発を起こさないために作業している人達は、自身の人生や家族の将来を賭して、この国の国民の安全の為に仕事をしている。
私にも家族がいる。妻と5人の子供達。末っ子はまだ4歳だ。私はこの自分の家庭背景を以って、あの現場に立ち向かう勇気は持てない。自分が情けない。あそこにいる勇者達にも、それぞれの人生があるはずだ。私は無力な男だ。代わってあげたいなどと考える事すらおこがましいではないか。私にそんな勇気などないくせに。しかし、軽々しく自衛隊を批判する一部の左翼は、今どのような気持ちで福島第一原発の状況を見ているのだろうか。原発反対とだけ言って、実生活では十分すぎる電力供給生活を謳歌して。あそこで自身の身を挺して国を守ろうとしている同じ国民の姿を想像したことがあるのだろうか。彼らは個人の人生より、「公」(おおやけ)の為に今この瞬間に生きているのだ。

3号機の中には、使用済燃料棒の貯蔵プールがある。水素爆発で使用済の核燃料が露呈した可能性も高い。現地で作業する方たちの危険性はさらに上がっている。現実を受け入れるしかないのか。あそこで必死に食い止めている人達がいるのなら、その末の結果であれば、何も出来ない私達は、それを受け入れる勇気が必要なのかもしれない。現地で被災された方々にとっては、2重の不安と苦しみだ。遠方にいる我々の出来る事。それはとにかくしっかりとより良い仕事をして、この国の経済を影で支える事だ。また、募金などで出来る限りの支援をすることだ。そして、いかにデリケートな問題であれ、真摯な気持ちで考える事だ。それぞれがそれぞれの立場に立って、悩む事だ。

弊社のレンタル品を、被害のない弊社拠点では、現在必死に整備している。いつでも被災地に運び込めるよう、準備を進めている。すべて人海戦術でやっている。被災地の苦労に比べれば、この程度のこと!という信念で整備している。日本人の道徳には誇れる物がある。

各国のマスメディアは、日本の道徳、倫理、モラルに驚愕しているらしい。被災地で今この時もご苦労されている方々の生き様は、助け合いと思いやりの魂(たましい)だ。そのお陰で、国民全体が見直されているのだ。

私にも出来ることがあるんだ。だからこそ、日本国民として真摯に働き、部下を指導し、導びかなければ。妻と会話し、子供に教えねば。
みんな働いている。「傍(はた)を楽にする」為に。
そして今この時も、福島第一原発の今日本で一番危険な場所で働いている勇者がいる。今は感謝し、拳を握り締め、遠くから応援するんだ。
遠く日本からオリンピックの決勝に出場した日本の選手を応援したように、声は届かなくとも、気持ちを送りたい。福島第一原発へ。がんばってくれ。
がんばってくれ。がんばれ。