経費

八方塞の状態が続いている。NGOのピース・ウインズ・ジャパンのおかげで、気仙沼私立中学校の体育館で、700名の被災者が避難生活を強いられている現場に、マットレスを運ぶという計画までは立案できたが、運送手段がない。
とにかくどの運送会社も車が取れない。関西は、スタンドが正常に機能しているから、ガソリンも満タンで出発できるのだが、帰りのガソリンが調達できないからと言う理由で受け付けてくれない運送会社ばかりだ。値段も法外な金額を出してくるところもある。経済活動は重要だ。しかし、何故この時に、それまでして儲けに走るか。悔しいが仕方ないのか・・・・。商売を否定する事はできない。何もかも無償がいいって訳じゃないが。
気仙沼市立中学校の700名の被災者の方々は、床にシートや毛布をひいている状態がほとんどらしいのだ。願ってもない打診だと、NGOは言っているのだが、運ぶ手段がない。昨日からずっとこの調子だ。

昨日、長男の卒業式だった。仕事中だったが、晴れ姿をひと目だけ見ようと、卒業式終了後の写真撮影のタイミングで、小学校の体育館に入ることができた。自分の携帯で長男を撮影する時、靴下のままだった私は、改めて体育館の床の冷たさを感じた。
「こんなに冷たいのか・・・・」
2枚だけ長男を撮影し、妻に目配せをして、その場を去った。車に戻る道すがら、涙が出そうになるのをこらえ、奥歯をぐっと噛み締めた。

夢にまで出てきた。避難所の体育館の床が発泡スチロールで、人が多くて割れてしまい、下が水になっていて流されるという夢だった。不謹慎な夢かもしれないが、今私は、その夢の映像を覚えている。私の脳がその映像を無理やり繰り返し映し出している。それが苦しい。

一日でも早く、一刻も早く避難所に持ち込みたい。
すぐここに300枚もあるのに。

会社はこの為の運搬費の出費を認めてくれない。知恵を絞って、方法を考える。

今ほど「経費」という会計科目が憎たらしい事はない。