水泳ブランド

水泳に関わるスポーツブランドがある。ミズノはランバードデサントはアリーナ、ゴールドウインはスピード、アシックスなど。それぞれ大好きなブランドだ。各ブランドに友人も多い。ミズノには、現役時代に3度のオリンピックを経験し、今でも日本水泳連盟の仕事も手伝うほど、選手としても、仕事においても、多大な貢献を続けている「緒方茂生」さん。アリーナには、私も現役時代からお世話になり、引退後も何度も食事をご馳走してくれて、会社の寮にも泊めてくれたほどにお世話になった「春木亮一」さんと、春日部共栄高校水泳部の後輩にあたり、少年時代から良く知っている「楡木栄次郎」さん、スピードは、我親友の「長畑弘伸」さんや、同じ1500mの選手だった、「杉村吾郎」さん、近大の令子や、女子800mの選手だったマヤ、シンクロのオリンピックメダリストの「藤井来夏」さんもいる。
同じ恩師に教わり、同じ釜の飯を食い、30年近い付き合いになる長畑(ボブ)が起業している「スピード」は、個人的に凄く応援している。
アリーナというブランドは、デザインが大好きだ。ブランドのマークも、現役時代から大好きだった。春日部共栄高校の水泳部のユニフォームを作る時は、絶対にアリーナにしようと決め、先生を説得して、自分でデザインして、アリーナの営業の方と入念に打ち合わせをして、それまでにはなかった切り返しのデザインを作ったりした。今でも我が家の家族は、ナイキとか、アディダスとか、そういったブランドのジャージは買わない。普通のスポーツショップに行って、必ず最初に探すのが、スピードやアリーナの、水泳ブランドのジャージなどの衣類が売っているかどうかだ。普段着ている家族のジャージは、全部アリーナかスピード。中学校に通い始めた長男のバッグも、真っ赤なスピードのバッグ。今では子供達も、水泳ブランドしかほしがらない。もうスイミングスクールにも通っていないのに。明らかに私の影響だろう。
それぞれのブランドに、それぞれの仲間や立派な先輩や、後輩や親友がいる。どのブランドも大好きだし、ますますデザインも売上も伸びていってほしいと思っている。

しかし、先日の日本選手権で、昔から親交の深いあるコーチに聞いたのだが、親友の長畑が販売促進している会社がスピードの販売専属代理店という理由だけで、水泳界で仲間はずれにされている現状を知った。スピードだけ会場に販売ブースがないし、日本水泳連盟は、スピードが水連主催の大会で、ショップを出す事を禁止している。スピード以外のブランドは、選手控え室にまで入り込めるのに対し、スピードは、一般の観客席にしか入れない。たまたま今回の日本選手権から、ゴールドウィンは、他のブランドと同じように関係者の入れるブースに席が出来たそうだが、実際には、水着とキャップしか日本代表選手に提供できないらしい。ジャージやバック、その他の商品は、提供を禁じられているという。
オリンピックまで行き、その後も水泳界に社会人として貢献し続けている彼に対して、他のブランドは、その仕打ちは実に小さい○○の穴だ。同じ水泳を通して、現役時代に同じ目標に向かって努力した、いわば同じ日本人としての同士を、そのように扱っているとは愕然とした。私はよっぽど長畑にその真相を聞きたいと思ったのだが、今まで一切そのような事を私に言わなかった彼の心情を考えると、今になって私からそれを根掘り聞き出すのは無礼と思い、聞くのをやめた。

日本水泳連盟は、ミズノ、デサント、アシックスの3社のみにしか、協賛をさせていない。財団法人の権限や運営基準のことは良く知らないのだが、普通の民間企業で言えば、完全に独占禁止法に抵触するのではないか。
どのブランドを選ぶかは、それぞれのブランドの営業努力によって、選手やコーチが選択するものであって、その権利はマーケットにあるはずだ。なぜその権利を、日本水泳連盟がコントロールする権利があるのだろうか。より多くのブランドの参入を奨励し、協賛金を有効に増やし、その収益で選手育成に関わる専門施設を国の助成金を使って建設し、協賛金を運営に当てる事だって出来るではないか。
それぞれのブランドが、ビジネスである限り、競争するのは当たり前である。企業の努力が経済の繁栄を生む。
私は親友を贔屓したいのではない。過去一度、水泳業界で新しいブランドを流通させてみたいと少し動いた事があった。その内容は今回は割愛するが、その時も様々な横槍があり、水泳界のブランド販売を取り巻く環境にほとほとがっかりした経験がある。

ほんの一部のコーチは、毎日子供達に「先生」と呼ばれているせいか、完全に勘違いしている人もいる。ブランドの営業が訪問しても、暴言を吐き、馬鹿にした態度で接し、天下を取ったかのごとく自己陶酔に浸っている者もいた。教える立場にいる者は、「聖職者」であらねばならないと、私は恩師に教え込まれてきた。今私はまったく違う世界で多くの部下を抱え、また、多くの後輩に対して、それぞれの正当性を評価しつつ、それぞれの正義を模索し、より良いアドバイスが出来る様、誠心誠意努めている。「鈴木大地」さんが以前、「水泳界なんて狭い世界でしかない」という事を言っていた。その通りだ。本当にトップに立ったから言える言葉であり、トップに立ったから真摯になれるのだろう。

私は今の水泳界を知らない。しかし、選手はますます進化している。より純粋に記録を追及する真摯な姿勢が、日本の水泳界を世界で勝てるレベルに持ち上げた。低迷していた水泳界は、鈴木大地さんの金メダル以降、大きく成長してきた。そこに関わるコーチの力量も、大きく飛躍しているのだろう。
ブランドもそうあるべきだ。スピードは高速水着を開発し、より水を引きずらない、抵抗が圧倒的に少ない水着を開発した。それを中傷したり、足を引っ張る営業努力は、本当の努力ではない。社会のためになる努力ではない。政治家が権力闘争に勤しみ、政策論議を後回しにしている現象と同じだと思う。日本水泳連盟は、ブランドの競争ステージを標準化し、平等にすべきだ。まして、スピードは、つい最近までミズノが扱っていたブランドである。
水泳界から離れて見ている私は、この奇妙な現象に、異常なほどに違和感を覚える。各ブランドにいる友人は、みんな素敵な、立派な人達だ。有能な人材が、ますます企業努力し、同じ土俵に立って、正々堂々と勝負すべきだと思う。勝ったり負けたりするだろう。アマチュアスポーツとビジネスが違うところは、勝つだけではないところにあると思う。けど、それでいいではないか。ひとつのブランドを閉め出し、競争相手を3社だけにして、なるべく喧嘩しないようにやるって、ゼネコンの談合と同じだ。しかも、財団法人がそれを幇助しているのは、どう考えても良心が痛む。

ま、どうせ関係ないけど。
でも、外から見たら、異様なルールです。日本水泳連盟のルールは気持ち悪いです。今私は、関係ない世界にいるから、本音を言えます。

みんな個人は、素敵な素晴らしい人達ばかりなんだけどなあ〜
俺、みんな大好きなんだけどなあ〜
なぜ、アマチュア出身の人がいっぱいいるのに、そんなに正々堂々としていないのだろう。
一般企業より、スポーツの世界の方が歪んでいる。スポーツマンシップがまるでない。

選手以外は。