無題。

現役の頃、私は自分の人生に負けなどあり得ないと、そう本気で思って生きていた。

しかし当然人生はそんな甘いものじゃなかった。

解ってから、サラリーマンとしての時間、本当に自分との戦いだった。

のぼせ上がっていた自分の鼻を、へし折られる毎日だったからだ。

それが自分の成長のための顛末であり、必要な道と信じて辛抱してきた。

仕事を一生懸命やって、評価も勝ち取って、部下を愛し、真摯に生きてきたつもりだ。




しかし、古巣に少しだけ戻ると、そこは底なしの沼のように恐ろしい場所だった。
まさかと思いつつ、それでも使命を感じ努めたが、やっぱり人間の世界はそんなに甘くない。
美徳のある生き方など、現実に世界には存在しない。

いくらそれを目指しても、腐肉にも、目指せば、探せば探すほど、深みにはまるようだ。

みんな損得で生きている。

自分にもそんなところがあるのかもしれないが、どうしても言いたいことがある。

どうしてお前らはお互いを思いやれないのだ。

どうして戦おうとするのだ。

何のために自己の正当性ばかり主張する。

一時の心の快楽のために人を落とし入れ、お前らは快感か。


俺は間違えていなかった。この今がやはり自分の生きるべき道だったのだと、神と師に感謝したい。
離れるべくして離れたのだ。
自分には居られなかった場所だった。





ただ。
どうしても拭えないのは、そこに集う昔の仲間との再開である。
これがきっと奇跡のように楽しく思えるわずかな時間となるだろう。


そこに輝く一人の太陽に感謝したい。
彼の輝きは金色に美しく、何年経っても私の眼に焼き付いている。
あの人の金色と、あっちのあの人の透明感が、今、私を取り巻く華によってまた、再開の機会を与えてくれている。





この世を知ることは辛いことだ。

しかしだからこそ輝きもある。



45歳になってもまだ、私は傷を負い、そして立ち上がる。
家族がいるから立ち上がれる。