LINE

内弁慶という言葉がある。


私に一番近い女性はまさにその典型。


ま、妻のことだけど。



例えばメールの返信。

私への返信はほぼ一言。

【はい】か【無理】という言葉以外、ほとんど見たことがない。


彼女からくるメールは、ほとんど怒り気味で急いでいるときの何かの確認の時だけ。

それも最小限の言葉しかないので、読解力が高くないと意味が読み取れない。

ものすごいレベルで文章を端折っているからだ。

例えば・・・・、

『鍵、どうしたの?持っていった?』

というような内容は、ただ一言。

『鍵!』

(んん??鍵??もしかして持ってるかって聞いてるのかな、いや、そんな簡単なことはないだろうな。いつも持ってんだから。誰か子供が家に入れないんだけどもう出て遠くなのか、近くなら子どもの誰かに渡して欲しい!ということだろうな)


みたいなことを読解できないと、全く意味が読めないわけだ。



反対に私の方が端折ったメールをすると、単純に妻は返事をよこさない。

無視である。




すごい女だ。





そんな妻が、最近物凄く必死に、しかも一日中メールをしている。


しかも、どうやら相手からタイムリーに返事が来るらしく、メールのバイブが頻繁に鳴り、その度、ものすごい長文を打っている。

これまで妻の携帯を打つ姿など、全く見たことがなかったのだが、昨日突然なにかの予感がして、少しじっと見ていたのだ。



相手がどんな人かはもちろんわからない。


話して楽しい友達なのか、久しぶりに熟女の恋にでも落ちたのか。


とにかく普段の妻ではありえないメールの長文を打ち続けている。


例えば。

LINEで私がメールしても、彼女は開きもしないので、既読されていない。

私は出先から、何かを伝えようとしてLINEでメールするのだが、とうとう家に着くまで、既読されていない。

LINEを開いてよ。と頼んでも、LINEなんか普段使わないから。と言って開かない。つまり家に帰ってきてからも、私のメールは開く意思すら示さない度胸の持ち主である。

しかし、私じゃない人では、物凄くLINEメールで長文打っている。



ある意味徹底した恐怖支配。

私にはどんなことがあっても関心を示さない。

神だ。

なぜ俺のメールを読まないのかと聞くと、もう会ってるんだから口で言えばいいじゃんと言って、それでもまだ開こうとしなかった。


メールをした時は、会っていない時なわけだから、そもそもだからメールするんだけど、完全に妻の論理はメールという存在のロジックを無視している恐妻ぶりである。

ただ、たとえ話せばいいからと、家で話しかけても、眉間にシワを寄せて、うるさそうにして、怒って小声でメール並みの短い返事を、実にめんどくさそうにするだけなので、恐怖で話しかけることすらままならない。

つまり、家の外の人には物凄く親切で丁寧な返事やメールをするが、家の中の人、更にはもともと他人の私には、なにかの親切をすることが、まるで大損コクように思えるらしく、一切丁寧な接し方はしない。


神だ。


もうすでに天然の域は大幅に超えている。


ここまでの女性は、47年間生きてきて初めてだ。


本人はこう言う。

『私、自分から人にどうこう動く人じゃないから』

だが、私には、その内容が重度であればあるほど、また、難しいことであるほど、様々な依頼をしてくるのだが。

または他人が相手だと、おいおいそこまで先に動かなくてもいいんじゃないか〜〜??というほど、親切に自己犠牲して動く。
そして家に帰って来て疲れて機嫌が悪くなる。


以前、おまえも自分で努力してやれよ。と言ったところ、


【ばかじゃん。住吉はできる人なんだから、できる人がやればいいじゃん。キモ】

と言われた。




神だ。




絶対に勝てない存在だ。

恐ろしすぎる。






私が一番心配しているのは、私自身がこれに耐えられなくなる事である。