チャンス

本当に馬鹿なやつだ。

今日釈放される。

検事としても不起訴相当判断であり、被害届けを出した女とその父親は、金さえ出せば、被害届けを取り下げると言う。

数百万円要求してきた。

こちらの弁護人と後輩とその家族としては、むしろ、こっちが詐欺で被害届けを出したいくらいなのに、後輩が発した言葉がネックになり、強要を認めてしまったため、示談交渉しか道がなくなった。

まったく世の中間違っている。

しかしそれでも、弁護人が確りと交渉してくれた。

(あんた、そんな金額言えた義理じゃないだろ、逆に訴えようか?)
という考えをちらつかせながらの交渉。
言いすぎれば相手を頑なにしてしまい、示談が進まなくなると、起訴されてしまう。
そうすれば前科である。

そこを弱みに使われて、数百万円の示談金を要求してきやがった。

周りに嘘つきまくって本人を陥れる刑事も悪魔のようだが、この似非被害者家族も、自身の詐欺行為は棚に上げておきながら、まるで悪魔の血の家族ように思えてくる。



この世に正義はない。



彼は、馬鹿女に数十万円騙されてつぎ込んでしまい、さらに示談金を払わされるのだ。

弁護人の交渉により、示談金がかなり下がった。

相手もビビッたらしい。逆に訴訟起こされたらかなわんと思ったのだろう。弁護士のお手柄である。

それでも、合計で200万円相当の金銭を取られてしまった後輩の家族。






心を入れ替え、クソ女なんかに二度と騙されない、確りとした判断力と、負けない心を、彼は勝ち取れるだろうか。自分を鍛えられるだろうか。
運も悪かろう。
女も悪かろう。
しかし、すべては彼が引き寄せた出来事である。
なぜ彼がそんな過酷な運命を引き寄せたかといえば、それは彼自身にも原因があるのだ。
結果には必ず原因がある。
彼の日頃からの行いと、心のあり方、自身の生きる歩み、それらにも問題があった証拠である。



私は彼を鍛えなおせるだろうか。
もう、山口県に転勤させてしまい、責任者は私ではなくなっている。
しかし、私が雇い、私が指導し、私が転勤させた。
私の責任なのだ。


会社はこの事態を鑑み、彼の復帰について最終判断していない。
私が復帰を要望しても、彼がそれに足る心構えでなくては意味がない。
また万が一、似たような事を起こせば、場合によっては会社に多大な損害をもたらす事もありえる。
彼の気持ちはどうなのだろう。


この2週間、私は留置所にいる彼を思い、何度も涙がこぼれた。
(かわいそうに・・・・・)
彼の心の痛みを思うと、私は息が詰まる。
しかし、それと会社への復帰とは意味が違う。
少なくともつまらない嘘をついて無断欠勤を繰り返したのだから。
いくら女にかき回されていたとはいえ、社会人として自己を抑制出来ない人格は、危険人物と判断される。



私だって昔は色々あった。
思い出せば恥ずかしい事の数々、人の事を言えた義理じゃない。
女性の心を傷つけた事もあった。
多くの後悔と反省の積み重ねの結果、たまたま私は妻のおかげで救われたといってもいい。
高校の同級生で隣の席だった妻は、私を最後に待ち、最後に拾った。
昔から綺麗過ぎて、怖くて声をかけられなかった。
高嶺の華だったが特別な間でもあった私たち。



そして今がある。
そして5人の子供たちがいる。
信じられなほどにみんな良い子たちだ。
妻のおかげでしかない。
たまたま私は妻に幸せにしてもらえたのだ。



彼を強くし、彼を正しく導かねば、私ばかりがずるい男のような気がする。


彼が望むのなら、私は会社に心から頭を下げ、お願いしたい。
我社はそういう創業者の会社だから。
罪を憎んで人を憎まず・・・・。
そういう創業者の会社だから、きっと分かってもらえると思う。
もう一度だけチャンスを。
彼にもう一度チャンスを。