これでいいのだ。

ロンドンオリンピックの競泳が終わった。

銀メダル3つ

銅メダル8つ

合計11個のメダルを獲得した日本競泳陣に拍手を賞賛を送りたい。


特に400mメドレーリレーの銀メダルは、私たちの時代ではまったく考えられない快挙である。
もちろんすべての種目においても快挙。
なんというか、普通に競泳種目がほぼ決勝に残り、しかも3位以内に食い込んでくる事自体が、私には大感動。
何度も言うが、私の時代には考えられなかった事なのだ。




北島康介選手の貢献度は計り知れないが、そればかりではない。
我々世代の英雄、ソウルの鈴木大地さん。

バルセロナの星、岩崎恭子さん。

アトランタはゼロ。

ところが、シドニーの中尾美樹さん、中村真衣さん、田島憲子さんと、そしてメドレーリレーの銅メダル。

アテネ北島康介さん、山本貴司さん、森田智己さん、男子メドレーリレー。女子の柴田亜衣さん、中村礼子さん、中西悠子さん。

北京の北島康介さん、松田丈志さん、男子のメドレーリレー。そして女子の中村礼子さん。

そして今回は、
萩野公介選手の400m個人メドレーの銅メダル。
寺川稜選手の100m背泳ぎの銅メダル。
鈴木聡美選手が100m平泳ぎで銅メダル、200m平泳ぎで銀メダル。2種目でメダルの獲得。
入江陵介選手は、100m背泳ぎで銅メダル、200m背泳ぎで銀メダル、2種目のメダル獲得。
松田丈志選手は200mバタフライで銅メダル。
星奈津美選手も200mバタフライで銅メダル。
立石諒選手は200m平泳ぎで北島選手を抑えて銅メダル。
競泳女子400mメドレーリレーも銅メダル。
そして男子はなんと、400mメドレーリレーが銀メダルである。


ここ近年のオリンピック競泳陣は、どんどん強くなっている。
そして何より、選手達の実直さがインタビューなどにおいてもよく現れていて、ひたむきにこれまでの水泳人生を生きてきたことがよく伺える。
素晴らしい。
素晴らしすぎる。






そう思うと、私たちの時代は本当にダメダメ時代だった。
あんなに物凄い練習を積み重ね、すべてを犠牲にして水泳に打ち込んでいたのに、どうしてあんなに世界との差があったのだろう。
特に私の種目であった1500mは、日本水泳連盟がとことん海外遠征に選抜してくれなかった。
理由は世界レベルが低いという理由。
しかし、逆に遠征に連れて行かないからこそ、世界レベルに触れず、強くならなかったのだ。
その影響で、今でも日本の1500mは世界では戦えない。
世界に手が届かなかった事によって、引退する時期も早かった。
大学を卒業すると、ほとんどの選手は引退し、社会人になることしか選択肢がなかった。
まれに企業実業団などに所属し、いつまでも泳ぎ続けている人が居たが、あの時代はそれが逆に変り者扱いされるほどであり、競泳を続ける事自体、世間に対し、後ろめたい程だったのだ。




今は時代が変った。
北島選手のように、プロスイマーとして、広告塔となって企業協賛を受け、スポンサードを受ける事によって、4年間じっくり戦う為のトレーニングを積む事もできる。
バタフライの松田選手は、スポンサード企業を獲得するのに、非常に苦労していたが、努力が実り、出身地の宮崎の企業が集まって、支援を受ける事が出来るようになっての今回のロンドンであった。




マチュアスポーツを続ける事は、とても幸せな事である。
多くの支援者や、協力者があって、初めて成立する。
一言で企業のスポンサードと言うが、会社は経営者の持ち物ではない。したがって、企業から協賛を受けたり、スポンサー料を受け取るという事は、その企業の社員の全員の努力や苦労の一部を譲り受けて、そのおかげでアマチュアスポーツを続ける事ができる。
周りには良く思わない人や、批判する人もいるだろう。
(いつまでそんなスポーツなんか続けているんだ。周りを見ろ、みんな一生懸命働いているじゃないか。)
そんな陰口と戦いながら、大学をでてから今までこのロンドンの為に努力して来た選手も多かろう。


このオリンピックという魔物とその魅力には、選手はもちろんの事、アマチュアスポーツを志していたことのあるすべての人が・・・、いや、ある意味では世界人類のすべての人が、心のどこかで選手と自分をオーバーラップさせ、勝つ選手、負ける選手にどこか自分を重ねて観ているのではないだろうか。





私は大学を出る前に、選手より、コーチの魅力に取り付かれた。
そしてアマチュアの世界に霹靂し、早く社会に出たがった。
マチュアの世界より、広い社会に出たくなったのだ。
マチュアのように閉ざされた狭い世界ではなく、広い世間に出て行きたかった。

しかし出てみてあれから20年。
間違えていたなあ。
世間の方がよっぽどつまらなかった。
こんなに世間が脱力感に苛まれる世界だとは思わなかった。
けど、社会の方が意外と実直な世界かもしれない。
マチュアは、選手とコーチが美しいのだ。
それ以外はあまり美しくない。





やっぱり私はこれでよかったのだ。
今が最短距離。
こうして遠くで見ているから、レースに感動できる自分を取り戻したのだ。
マチュアから離れ、冷たい世間で、嫌な上司を我慢して働いているつまらない男だけれど、だからこそ、美しい妻と暮らし、5人の子供に恵まれたのだ。

これでいいのだ〜〜。