野球部?水泳部?

浜松で土曜日、久しぶりに日本選手権の観戦に行ってきた。本当にたまたまなのだが、私の現役時代の種目である、1500Mのタイム決勝が決勝レースの最初に行われた。そしてそれは、私にとって、水泳のレース過去、最大の衝撃となった。水泳関係者にしかわからないかもしれないが、1500mで日本人が初めて、15分を切ったのだ。私の現役時代のベストタイムは、16分3秒。1分以上速いことになる。100mの平均タイムで、実に4秒早く泳いでいることになるのだ。
私の現役時代からは25年が経過している。25年の月日は長い。だからあってもおかしくない記録なのかもしれないが、私の夢見ていた記録の世界が、目の前で実現されたことに驚愕した。
当日は、本日4月12日に中学校へ入学する息子を連れて行った。息子は、中学に進学するにあたって、野球部に入るべきか、水泳部に入るべきか迷っていた。1500mの決勝レースを見ながら私は、「お父さんは、この試合で一番になったんだよ。もうずっと昔のことだけれどね。」と、話して聞かせた。そして、25年経って、私の記録より、1分速くなっている事も。

宮本陽輔選手。20歳。鹿屋体育大学3年生。14分57秒。

帰り道、長男に聞いてみた。「日本選手権を見て、どうだった?」すると、長男は、「うん。ぼく、水泳部に入る」と答えた。

私は複雑な気持ちだった。私は水泳を通して、最高の恩師に出会うことが出来たが、一方では、本当に大変な苦労をした。私達の現役時代のような苦労は、今の選手は、様々な意味においてもないとは思うが、それでも、アマチュアスポーツで芽が出たら、その魔力にどんどんはまっていく。先へ、先へ・・。市町村大会優勝、県大会、東海大会、全国大会、全国ジュニア、高校総体、日本選手権、金メダル、オリンピック選考会、そして、オリンピック。そして・・・・、オリンピックの金メダル・・・・・。

過去、どれだけの選手が青春をすべてアマチュアスポーツに捧げ、あらゆる青春の時間を犠牲にし、トップに立てずに引退して来たのだろう。栄光の陰には影がある。スポーツの実態は、勝者がすべてを奪っていくことにある。スポーツの神は、冷たい心で無心で斧を振り下ろし、敗者は勝者の横で小さく座っているだけだ。すべて、勝者が奪っていく。それがスポーツのもたらす、個人への洗礼。
だから、水泳のような個人競技に、たった一度しかない青春の時間を駆けていく事が、本当に我愚息にとって良いことなのか、わからないのだ。

しかしどうせやるなら、1秒でも速く泳ぐことに努力してほしい。私も彼が本気でやるなら、本気で支援する。アドバイスも出来るだろう。試合に出るようなことがあれば、私は自分の事より緊張し、自分の事より不安になるだろう。また、25年経って、そういう時間を過ごすことになるのだろうか。

せっかく水泳から足を洗って、まったく違う世界に生きて来たのに。
全然関係ない世界で、やっと水泳時代のような結果が出始めてきたのに。
また気持ちを水泳に費やす時が来るとは・・・・。
やっぱり野球にしない??きょうたろ〜。個人競技って厳しいぜ。
けど、おまえに使う、心の経費なら、いっぱい貯まっているよ。
がははははは。そんな程度の経費、俺に言えばいつでも出すぜ。心の経費は大金持ちだよん。