出産と生きる強さと

部下のジョンの奥様・・・、無事に男の子が産まれた。本日11時のこと。彼はその後、溜まった仕事を片付けに会社へ来た。
「おめでとう!」という私。彼も嬉しそうに、慣れない喜びに顔を引きつらせながら、「ありがとうございます!」と言ってくれた。
よかった。初産の奥様も、きっと不安と恐怖と、苦痛に絶えた甲斐があったろう。

私の妻は5人の子供を産んでくれた。最初や2人目のときは、病院に付きっ切りだった。心配だったし、誰より私自身が不安だった。何かとんでもないトラブルが起きないものかと、いらん心配に押しつぶされそうだった。
三人目のときは、朝方、妻が突然、「病院行って来る!」と言って、自分で自家用車を運転して出かけた。
私はそのまま、家でゆっくりシャワーを浴びたりして準備をして、着替えて会社の車で出勤して、その足で落ち着いて産婦人科へ向かった。
到着した産婦人科では、周りが変に落ち着いていて、なんだか出産間際の緊迫感がない。おかしいなと思い、看護婦さんに聞く。
「住吉ですけど、妻の方は今どうなんでしょうか?」
すると看護婦さん、「あら、もう産まれたわよ!?」と言うではないか。
妻は自分で産婦人科へ行き、陣痛を乗り越え、自分で出産を済ませていたのだった。
当然、申し訳なく思う私。ごめんなあ〜と、侘びを入れながら妻のベッドに向かい、生まれたばかりの次女(あずさ)を抱き上げる。
妻は、「だってすみよし、仕事で疲れてるじゃん、平気だよ・・」と、私に産まれた後の、子供を可愛がれる時だけを味あわせてくれたのだ。
四人目の3女の時も、5人目のときも、妻は一切弱音を吐かなかった。私に負担をかけたくない、私に、子供の喜びだけを感じて欲しいと、自分の苦痛や不安につき合わせなかった。
だから彼女は私にとって「神」だ。

しかし、その妻も、2番目の子供が産まれた時、それが男の子だった時、私の父がまさに孫を見に来た時、その時だけ妻らしい一言を言って泣き崩れた。
「お父さん・・・!やったよ!私!・・・。男の子だよ・・・!」
そういって、出産間もない体で、起き上がり、我が親父の手を握り、涙を流したのだ。妻は基本的に無口だし、そんな言葉を、私の父にかけるような気概のある女性じゃない。けれど、これだけは妻にとって、大きな、そして重大なことだったのだろう。
そして私は妻の人間力を垣間見た。長男の私。親父が跡取りが欲しいと思っていることを、私よりはるかに、妻は気にかけていたのだ。
私はそんなこと興味なかった。跡取りなんて、そんなのナンセンスって思っていただけ。
産まれてくる子供が五体満足でいてくれれば、それでいいって。そう思っていた。それが人の道だと。
けれど、私は15代続く住吉家の長男だ。妻は、それを私よりも、親父よりも大切な問題として、捉えていたのだろう。
その時、妻の偉大さを知った。
妻は女性三人姉妹。兄弟に男の子はいない。
だから、自分が嫁に入るという時点で、跡取りを産む事が使命だと思ったのだろう。私たち夫婦の間ではそんな会話は一切なかったのに。
そんな思いを抱えていたなんて・・・・。
それから私は根本的に妻に対する見方が変わった。尊敬心が芽生えた。強い女性であることと同時に、実は、私の両親のことまで、私以上に考えている思慮深い女性であったこと。
その後三人子供を産んでくれたがいずれも女の子であったし、きっと長男のために、全エネルギーを使い果たしたのかも。
そうはいっても、我が家は5人の子供がいる。
今日も妻はクタクタだ。
長女は部活で帰りが遅いし、なんやら彼氏が出来たみたいだし。
長男はだんだん男っぽくなってきて、生意気だし。
次女は一番頭よくて、一番手伝ってくれるけど、妻と性格が微妙に合わなくて喧嘩んばっかり。
3女は全然言う事聞かなくて、勉強しないし学校の仕度しないし、テレビに夢中の将来不安少女だし。
4女・・・・、すなわち5人目は、まだまだ幼稚園。賢いけどイタズラがひどい。
妻は毎日大奮闘だ。

今だって3女(2年生)が、泣きながら起きてきて、「お母さん、おしっこ漏れちゃった〜」だって。(爆)

最近つくづく感じる。人の美しさって、「何をしたか」ではなく、「どう生きているか・・」だと。

これは米さんの教えでもあった言葉だ。

好きだよ、りさちゃん。いつも君は綺麗だ・・・・。