『想定外』

先の震災以来、『想定内』と言う言葉と『想定外』と言う言葉がよく使われる。
今朝、たまたまラジオで聞いた話が、私が一度ブログ記事にしようと思っていたことに近い事を話していたので、ここで少し触れてみたい。


と言っても、私は記事にする内容について、いちいち専門的に勉強しているわけではないのであしからず。


して、『想定内』という定義だが、テレビでよく、見たり聞いたりする情報で、想定内や想定外という言葉をよく使う事になった対象は、そのほとんどが大学教授とか、エリート官僚である。
テレビの解説者もコメンテーターも、想定内・想定外という概念について問いただす対象として、エリートという立場にある人を常に攻め立てる。

つまり、もともと想定内の事に物凄く強い人たちの事を『エリート』という。
エリートと呼ばれる人たちは、物凄い集中力を持っている。
その集中力を駆使して、勉強してきたから、どんどん頭に入る。
そして、その集中力を使ってテストを受けるから、試験に合格できる。
そしてより良い大学に入学し、より良い会社や組織に入る事ができると言うわけだ。
つまり、エリートと言うのは、想定内のことについてめっぽう強い集団のことを言うのだ。
想定内というのは、『すでに誰かが知ってる問題』に解答できる能力のことを言うのであって、『無から有を生み出す』つまり想定外のことを測れる能力の事を言うのではない。
つまり、想定外のことを想定する能力と言うのは、エリートのような集中力という能力によって培われるものではないと言う事である。
想定外という概念はむしろ、集中の反対で、分散・拡散的思考の上に成り立つ概念と言える。


たとえば想定外とは、ある科学者が、
「今日の1時に、アルファ宇宙域のカーデシアプライムという星から、カーデシアという宇宙人が地球を攻めてくる!」
と、いきなり世間に言い出すこと・・・とも言える。
当然、大半は信じないし、キ○ガイ扱いされてしまうだろう。
しかし、想定外という定義は、すでに誰かが知っていて、その知っている事を問題にした場合の『解答力』に強い事を指すのではなく、まだ誰も知らない、考えたこともない事柄や概念について『想定』する多感的能力のことを言うのだ。



要するに、エリートには想定外を想定する事なんて、そもそも無理だと言う事なのである。
と言う事は、どちらかと言えば、いつも考えている事が不埒で、あまのじゃくのような変った科学者や、変人扱いされている研究者の発言や考え方に、世間は耳を傾けなくてはならないのである。
変人扱いを受けている科学者、研究者は、実は結構普通の人が多い。
勝手に世間が色目を使って、変人という定義に押し込んでいるだけで、実は東北の震災の際に起きる、巨大津波を、もっとずっと昔から想定し、発表していた科学者は、結構いたのだが、3月11日より前の世間の実態は、そのような巨大な災害の予測を訴える科学者を変人扱いする世界だったのだ。



世間の想定は、想定できている事が、世間にとって聞きやすく、慣れ親しみやすく、受け入れやすい内容であって欲しいと言うのが本音となってしまっている。
しかし実は、想定する・・・・という定義自体、あらゆる角度から、人類の過去の経験と歴史では培ってこれなかった、いわゆる「想定外」を『想像』することから始まるのである。
すでに過去に誰かが知っている事をテストの問題にして、その問題を解答する集中的能力によってしては、「想定外」を想定することは実に困難なのだ。
最高の秘書になれても、初代創業者にはなれないのだ。



集中と分散。



常に背中合わせの現実。
たとえば企業も、成長期には基地網を整備しどんどん事業を広げ、支店を増やし、人材を増やしてゆく。
しかしマーケットの規模に対して、企業規模がある一定の比率に到達すると、成長は止まる。また、貨幣価値の変動によっても、成長条件を満たせなくなって成長は止まる。
そして衰退へ向かう事になる。
衰退を留まらせ、企業の存在自体を担保する為には、今度は組織を集中させ始め、筋肉質な体制に変化させなければならなくなる。



想定するという作業は、分散能力によって多感的に分析し、ある一定の情報量の元で、リーダーの決断によってターゲットを選定し、今度は集中能力によって想定という定義の作業に入る。
分散能力は政治。
集中能力は官僚。
そうやって日本が機能すれば、日本人、いや、人類は、常にその英知を最大化できるだろう。
しかしその想定外の想定は、どこまで行っても結局その思考限界値による想定内でしかないのだ。
本当に明日、宇宙人が地球を攻めてくる・・・!なんていう想定を出来る人が、いるだろうか・・・・・。
いないだろう。
と言う事は結局、想定外の想定など不可能であり、分散能力はいずれも、変人のたわ言としてしか、受け入れてもらえないのが世の常なのだ。





もうすぐカーデシア人が攻めてくるのに・・・・・。
誰もそれを信じてくれない・・・・・。