苦情という名の告げ口



権利の主張を始めると、人間は際限なく逆上せ(のぼせ)上がる。
たとえば【苦情】。


昨日少しの間、家の前に車を止めておいたら、即効で警察に電話したやつがいたらしく、パトカーが家の前に現れた。
『ピンポ〜ン!』
とベルが鳴るので出てみると男と女の二人組みのおまわりさん。
時刻は夜9時。

「こちらの車は、あなたのですか?」
と聞かれ、
「はい。」
と答える。
すると、
「実は、近所から苦情が出ております。家の前とはいえ、一応、T字路の交差点になっているのに、止めさせておいて良いのか?」と言う内容で・・・・・」
「はあ。こんな住宅街の広い道路で、ですか・・?」
「はい、私どもも、杓子定規でどうこう言うつもりはないのですが、一応、交差点といえば交差点なものですから・・・・・」
「駐車禁止や、駐停車禁止の標識もないし、完全な住宅地なのに・・・ですか?」
「ええ。申し訳ないんですが・・・・・。」


我が家の前の道路は駐車禁止の標識がない。
一般的には、警察はここでキップを切る事はほとんどないだろう。

しかし警察の話は、実はもっともで、駐車禁止については、標識がなくても、基本的に道路は駐車禁止であり、どんな閑静な住宅地であろうとも、道路が交差しているポイントでは、交差点の中心から、半径何メートルか(5m?)は、駐停車禁止というのが道路交通法なのだ。

「しかしおまわりさん〜。こんな事をいちいち、苦情と言って電話してくる人がいるんですね〜?」
と聞くと、
「ええ。私も、本当はこんな事でご主人さまを煩わせたくはないんですけどね・・・」
と本音をチラリ。
「多分聞いても誰かは教えてくれないんでしょうけど、警察をこんな程度で動かして、さぞかし快感なんでしょうね。」
と聞くと、
「ははは。私たちも、こう見えて本当に忙しくて。もっとやることがあるんですけどね・・・」
「つまらないことで苦情、苦情って、最近増えたんじゃないですか?」
と聞くと、
「・・・・よくご存知ですね〜。本当なんですよ〜」
と言いながら、苦笑い。


【交差点内における駐停車禁止】
のキップ、当然、切られる事もなく、おまわりさんは、逆に私に恐縮して、頭を下げる。

「ですよね〜・・・。でもすみませんでした〜・・・」
と、ここは素直に従い、私は駅の駐車場へ車を移動。
道路交通法上では当たり前。



しかし私はどうも解せない。



なぜいちいち、近隣の家の前に車が止まっている程度で、警察に電話するやつがいるのだろう。
善意の住民ヅラして、実は、無駄に権利を主張し、苦情という日本語を堪能して【告げ口】の快感に酔う日本人。
時々必ずそういう日本人がいて、何か気に入らないとすぐに市役所に電話したり、警察に電話したり、消防署に電話したり・・・・・。
そして【地域住民】という隠れ蓑を傘にして、善意を装う。
自身は直接出てこないで、別の組織を使って、同じ住民を、攻撃する事で、自分が正義を気取る。
自分がやっている事を正義だと思っているのだ。



ワイドショーを見すぎなのだ。
ワイドショーのコメンテイターよろしく、テレビの討論会なども流行り、よくしゃべるあの文句の専門家達は、常にあらゆる税金によって働く相手を対象に、言いたいことを好きなだけ言い、攻撃し、権利を主張し、不満をぶつけ、原因をすべて、自分以外の対象に持っていく。
そういう影響を受けた、苦労の経験のない主婦が、【110番】という、本来およそ縁のないような組織に平気で電話し、警察でもあきれるようなつまらない苦情を持ち込む。





先日、一人暮らしの大学生が急に具合が悪くなり、119番に電話し、救急とのやり取りで、結局救急車に来てもらえずに、命を落してしまうという、実に悲しい事件があった。
理由は、救急の窓口の電話で、
「自分で歩けますか?(動けますか)」
という救急の問いに対して、
「はい・・・動けます・・・・」
と答えてしまったことが原因だと言う。
救急のマニュアルでは、自分で動けると答える患者には、タクシーを勧めるというルールがあるらしい。

私はこのルールがいかがなものかという議論には意見は言えない。
救急というシステムについて、よくわからないから。
しかし、そもそも、救急が、【自分で動けると答えた人】を、そう答える人は、タクシーを勧めるようにマニュアル化された原因に、この真因があるのだと思うのだ。


これは、どうでもいい事で救急車を呼ぶ、実に頭の悪い、世間知らずの主婦や親父や老人がいることが原因となっているのだ。
救急車を呼んで、バスやタクシー代わりに、普段の通院の為に使ったり、酔っ払って家がわからなくなり、警察に電話してタクシー代わりに使ったり、飼っていたペットがいなくなり、捜索の為に警察を呼んだり・・・・・。


駐車禁止の標識のない、住宅街の広い道路の、自宅の前に、ちょっと止めてる車の『告げ口』を、確かに警察は、【迷惑電話】とは言えないだろう。
しかし、このくだらない通報も。あきらかにおまわりさんの本音としては、
『どこの暇人やねんっ!!』
という所であろう。
話していてよくわかった。



迷惑だ!
と、言える先があること・・・・・。
納税者であると言う理由で、警察から何から好きに使う。

その対象が隣の家であっても、警察に電話できると言う権利を、実に安直に行使する地域住民という仮面を被った卑怯者が昨今増加しているこの世の中に、何が絆だと思ってしまう私。


苦情ってのは、物凄い音量で音楽かけて寝られないとか、隣がゴミ屋敷で、臭くて生活が苦痛だとか、ちょくちょく風呂を覗かれているとか、下着を盗まれたとか・・・・・。そういうのを苦情って言う。




直接自身が迷惑を被られていないのに、えせ善人になったつもりですぐに警察だの、消防署だのって、そういうの、税金の無駄使いと言うのではないか。



人の感じ方は千差万別とは言うものの、この世の中の道路、ほとんどの道路が駐車禁止の道路である中で、住宅地の駐車禁止の標識もない閑静な道路に、住民がちょこっと車停めてるくらいで騒ぐのは、住民同士、互いに住みにくい世の中にすべく、首の絞めあいではないだろうか。